社長のブログ

2022/10/06 10:54

前日のブログで「明日の日曜はゆっくりと休ませていただきます。」と宣言したものの、季節外れの冷え込みで晩霜があるかもしれないと心配の夜を過ごしてみると、結局朝から産地を巡るドライブに出発することになりました。「お茶屋の性」というものでしょうか。苦笑

宇治田原町の奥山田地区から滋賀の朝宮、和束の一番奥深い湯船地区と「心配された場所」を見て回りましたが、流石に晩霜被害はなかったようで安堵しました。途中、奥山田の日陰に写真のような美しい花が群生しています。

インターネットで調べてみるとシャガ(英語名ジャパニーズアイリス)というアヤメの一種だそうです。中国から古い時代に帰化し古くに人家があった後地のようなところの日陰に群生し、シャガのある場所にはチャノキがあることが多いと書かれています。長い歴史の中で茶がどのように日本に根付いたかを感じさせる話です。

さて、今回は午後の半日をかけて和束町をつぶさに見て回りました。弊社の契約農家の多い白栖地区から釜塚方面を見ると明らかに覆いの数が少なく感じます。4月後半の急速な芽伸びで露地のまま摘採して煎茶にした畑が多いと聞きますが、それを実感しました。逆に釜塚の山から白栖、原山を眺めると明らかに摘採が終盤に差し掛かっていることがわかります。そしてその「刈り後」が碧い。ここまでの天候の順調さを物語っています。

さて、そうして最後にいつもてん茶でお世話になっている個人工場をお邪魔しました。そこで壁になりやらかわいい絵が。

よく見るとこの農家の畑を地図化したものです。奥様の手製でしょうか。

そうして「さえみどり」の畑にだけ、ハンコが押されています。聞いてみると毎年こうして畑を地図化して、製造が終了するたびにお子さんがハンコを押すのが家族の楽しみとなっているそうで、何となくほのぼのしたお話に嬉しくなりました。その人柄やお茶の味の優しさの理由を垣間見た気がしました。

それとこの畑の数。40程もあります。日本の茶どころと呼ばれるところで品質のいい場所はどこもこのような中間山地と呼ばれるところに、小さな畑の集合体です。いかに「単一農家」「単独の畑のお茶」と言うことを「売り」にすることに無理があるかわかります。それぞれに素晴らしい特徴や個性があるのはその通りですが、すばらしい個性を発揮できないときも自然を相手にすればままあるもの。

それぞれの農家やお茶との関わりの中で、自分なりの価値基準と信念を持ち、その中で仕入をし、仕上げとブレンドで味を調え、安定したお茶を全世界のお客様にお届けすることに専念しよう、その思いを新たにした一日となりました。

※2012年5月14日分再掲載